突然ですが、みなさんノーベル賞とりたいですよね!私はとりたいです。今回はノーベル生理学・医学賞を受賞するための戦略を考えていきたいと思います。この記事を読めば授賞式の舞台、カロリンスカ研究所はもうすぐそこです!

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2020年のノーベル賞はC型肝炎ウイルスの発見に決定!

2020年のノーベル 生理学医学賞はC型肝炎ウイルスを発見した功績で、Harvey Alter、Michael Houghton、Charles Riceのアメリカ・カナダの3研究者に与えられることが決定されました。

私を含む、軒並みの予想は大外れしており、大本命のCRISPR-Cas9は化学賞を受賞するという一幕もありました。

C型肝炎ウイルスの発見については別記事も参照ください!

ノーベル賞の選考基準は?

ノーベル生理学・医学賞はスウェーデンのカロリンスカ研究所によって選考された「生理学・医学の分野で最も重要な発見を行った人物」に贈られます。

ってわかりずら!!!重要ってなんやねん!!!って思ったそこのあなた!

生理学・医学の分野での重要さ、とは最終的には病気を治すことです。

例えば2005年受賞のピロリ菌の研究は、胃癌予防のためのピロリ除菌という形で既に臨床現場で活躍しています。一方で、2012年受賞のiPS細胞のように未だ実用化されていないながらも再生医療への期待を込めて受賞となったケースもあります。

さて、それでは過去の受賞から傾向と対策を考えていきましょう。

過去の日本人の受賞者

日本人の受賞は過去5人、しかし2010年代に入って4人立て続けに受賞しており勢いを感じさせます。
iPS細胞で一躍時の人となった山中先生の「まだ誰も救っていません」という言葉に近年のノーベル賞の傾向が凝縮されているようです。

利根川進

京都大学理学部卒業、カリフォルニア大学バークレー校で分子生物学において博士号を取得。
1987年、V(D)J遺伝子再構成による抗体生成の遺伝的原理の解明によって日本人初のノーベル生理学・医学賞受賞。

山中伸弥

神戸大学医学部卒業。整形外科として3年研修を行ったのち、大阪市立大学にて医学博士号を取得。
2012年、成熟した細胞に対してリプログラミングにより多能性(分化万能性)を持たせられることの発見により受賞。iPS細胞で有名。

大村智

2015年、線虫の寄生による感染症・マラリアの新たな治療法の発見により受賞。イベルメクチンの開発で知られる。

大隈良典

東京大学理学部卒業後、理学博士を取得。
2016年、オートファジーの仕組みの解明にて受賞。

本庶佑

京都大学医学部卒業後、京都大学にて医学博士を取得。
2018年、免疫チェックポイント阻害剤の発見とがん治療への応用により受賞。ニボルマブで有名。

ここ20年の傾向

それでは、ここ20年の受賞理由を一覧で振り返ってみましょう。馴染みのあるものではMRI、ピロリ菌、HPV、HIV、ES細胞、iPS細胞、体外受精などがあります。まずはこれを国別、分野別、医学部出身or非医学部出身で分けてみましょう。

2000年 神経系における情報伝達に関する発見 
2001年 細胞周期における主要な制御因子の発見
2002年 器官発生とプログラム細胞死の遺伝制御に関する発見
2003年 核磁気共鳴画像法に関する発見
2004年 嗅覚受容体および嗅覚系組織の発見
2005年 ヘリコバクター・ピロリおよびその胃炎や胃潰瘍における役割の発見
2006年 RNA干渉-二重鎖RNAによる遺伝子サイレンシング-の発見
2007年 胚性幹細胞を用いての、マウスへの特異的な遺伝子改変の導入のための諸発見
2008年 子宮頸癌を引き起こすヒトパピローマウイルスの発見、ヒト免疫不全ウイルスの発見
2009年 テロメアとテロメアーゼ酵素が染色体を保護する機序の発見
2010年 体外受精技術の開発
2011年 自然免疫の活性化に関する発見、樹状細胞と獲得免疫におけるその役割
2012年 成熟した細胞に対してリプログラミングにより多能性(分化万能性)を持たせられることの発見
2013年 細胞内で生成されたタンパク質を細胞核などの目的の場所まで運ぶ仕組み(小胞輸送)の解明
2014年 脳内の空間認知システムを構成する細胞の発見
2015年 線虫の寄生による感染症・マラリアの新たな治療法の発見
2016年 オートファジーの仕組みの解明
2017年 概日リズムを制御する分子メカニズムの発見
2018年 免疫チェックポイント阻害因子の発見とがん治療への応用
2019年 細胞による酸素量の感知とその適応機序の解明
2020年 C型肝炎ウイルスの発見

国別ではアメリカがダントツのトップ

受賞者の国籍別で分けた結果が以下の通りです。やはり莫大な研究費で生命科学の覇権を握るアメリカが過半数をしめてトップになっています。日本も4位と健闘。日本人の勢いも捨てたもんじゃなさそうです。

次の世代で中国の受賞が増えてくるかどうかにも注目が集まっています。

アメリカ 28人
イギリス 11人
日本 4人
オーストラリア 3人
フランス 3人
ノルウェー 2人
アイルランド 1人
カナダ 1人
ドイツ 1人
スウェーデン 1人
中国 1人

分野は偏りなく受賞

分野別では様々な分野に満遍なく賞が与えられている印象です。

生化学 5
生理学 5
発生学 4
微生物学 4
免疫学 2
その他 1

医者は少数派(医学部出身 vs 非医学部出身)

53人中で医者はわずか13人となっています。日本の山中博士、本庶博士のようにアメリカ以外の国では医学部出身の研究者が多い印象です。

論文の戦闘力、インパクトファクター/引用回数

突然ですが、インパクトファクターという言葉をご存知でしょうか?
インパクトファクターはジャーナル ごとに与えられる数値で、掲載されている論文が平均何回引用されたかを示す数値です。

生命科学分野ではNature 40、Science 38、Cell 30の三つの雑誌がCNSとして崇拝されています。人気で言うと日本で言うPopteenやCanCanに引けを取りません。

さて、一般的にCNSに論文を載せるのは大変狭き門のようなのですが、2本載せると日本では生命科学分野で教授になることができます。

しかし、ノーベル賞受賞者は無数のCNS論文を発表することはもちろんのことながら、新しいジャーナル すら作り出してしまうのです。

iPS細胞は再生医療の扉を切り開き、多くの専門誌を生み出しました。ノーベル賞恐るべし…

受賞が期待される日本人

それでは最後に2020年の受賞予想をしましょう。毎年囁かれているのですが、CRISPR-Cas9関連で石野博士の受賞はあるのでしょうか?今年も10月に発表されますが、非常に楽しみですね。

森和俊

京都大学にて薬学博士を取得したのち、生物学の研究に関与。細胞内の小胞体で作られた不良品のタンパク質がどのように感知され、処理されるかを明らかにした、小胞体ストレス応答の研究で知られる。

坂口志文

京都大学医学部を卒業した後、医学博士を取得。過剰な免疫反応を抑える制御性T細胞の発見と免疫疾患における意義を解明したことで知られる。

石野良純

大阪大学薬学部を卒業した後、九州大学にて核酸関連酵素および蛋白質の機能構造解析とその応用研究を行ない、原核生物の獲得免疫系座位「CRISPR(クリスパー)」を発見したことで知られる。

ツアコン

アメリカ国立衛生研究所の近所で生まれる。札幌の一級河川創成川にて鯉のコーンに対する反応を研究した後、長期間の自転車旅行が人体に与える影響を調査して医学士を取得した。2020年にはボリビアにて高地環境が睡眠時無呼吸症候群に与える影響についての研究を行なった。

このような症例報告は業績のほんの一部である

COVID-19、コロナ関連の受賞はあるの?mRNAワクチンは?

mRNAワクチンは2021年超有力候補

さて、今年の受賞の大本命はみなさんも接種されましたでしょうかmRNAワクチンでしょう。COVID-19パンデミックにおいてGame changerといわれ、驚異の発症予防・重症化予防を示し、一時はマスクの放棄→勝利宣言まで至りました。

しかし、受賞に際して不安要素もあります。それはδ株の出現によって再度感染拡大が起こった事です。先行きが見えないコロナ禍だけに受賞は生物かもしれません。

以下、その開発に携わった二人の受賞候補を紹介します。

Katalin Kariko(カリコー・カタリン)

アメリカ在住のハンガリー人生化学者。RNA研究に従事しワイスマンとともにmRNAの抗ウイルス応答に取り組んだ。

Drew Weissman(ドリュー・ワイスマン)

アメリカの医師・免疫学者。カリコーとはペンシルベニア大学のコピー機のそばで出会った。当時RNAを脳卒中治療に応用しようとしたカリコーが直面していた免疫反応の惹起の問題を、合成ヌクレオチドを用いた修飾で解決し臨床応用に貢献した。

まとめ

いかがだったでしょうか?
新たな分野を創設するような斬新な発見ををして、臨床現場に還元される未来を示すことができればノーベル賞を受賞できるでしょう!

ノーベル賞の取り方についてラジオでもしゃべっております。

3 Comments

坂本達廣 · 8月 16, 2020 at 11:25 pm

日本人女性のノーベル賞が出てきて欲しいと思います。候補はいますか?

    ツアコン · 8月 27, 2020 at 5:57 am

    質問ありがとうございます。私も気になったので調べてみましたが有力候補と呼べる人物は残念ながらいませんでした。
    記事中ではあえて男女で分類しませんでしたが、生理学医学賞に関してはここ20年で6名の女性が受賞しています。
    雑感で申し訳ないのですが、日本に関しては生命科学系の教授の男女比が欧米と比べて圧倒的に低いのでしばらく受賞は増えてこなさそうですね。
    余談ですが、STAP細胞の件では、当初ついに日本人女性が若干30代でノーベル賞を受賞するのか!と、素人ながら興奮したものですが…

誠実生美鋼 · 9月 8, 2020 at 1:44 am

カルロスゴーンは安来の工学博士に逆らったのはまずかったんじゃないの。

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