みなさんこんにちは、ディレクターのKATOHです。さて今回は我々の高校時代、すなわちEPC発足当時の話です。過去の話を語るのはあまり好きじゃないのですが、現在スタートしている週次のyoutubeによるラジオ配信企画、EPC et ceteRadioのためのメンバーへの共有をかねて、当時の経験を文字化したいと思います。

Contents

何をしたのか

2012年4月から2013年7月にかけて、KOSUGEとともにラジオ番組の製作をしました。番組はさっぽろ村ラジオで2012年の間は週に1回、2013年には入ってからは月に1回の頻度で、洋楽×イギリスの最新情報というコンセプトで、企画、構成、収録、編集をKATOH、ラジオパーソナリティをKOSUGEが実施するという役割で企画から納品までを我々で実行しました。イギリス在住の共通の友人に情報提供やゲスト出演を依頼したり、出版業界の人に企画のアドバイスをもらうなどの複数の人の協力の元に成り立っており、特に何の実績もない学生にいきなり公共の電波を使う機会をくれたさっぽろ村ラジオの担当者の方には感謝しています。

背景、ラジオっ子であるEPC

EPCメンバーは、デジタルネイティブとして教育の実験台となり他世代から好奇の目で見られがちな1995年生まれであり、我々がお互いお認識する中学校に入る1年前にSteve Jobsが初代iPhoneを発表しています。

世界の投資家は手のひらに乗った高機能なコンピュータに熱い視線を送り、起業家はそれを利用するコンテンツやサービスの開発にしのぎを削りSNSやゲーム, 音楽や映画のストリーミング, ニュースまとめ, マッチング, Fin Tech に至るまで多様なエンターテイメントがビッグバンのごとく誕生しているのと時を同じくして、我々は自我を形成してきたわけですが、北海道という僻地にその波が届くことはなく、当時我々の周辺に届くのはラジオ電波しかありませんでした。

過去の成功体験の再生産をしようとする親や、教育洗脳をかけてくる教師たちからの唯一の逃げ場となったのがラジオでした。携帯ラジオは中学生の手が届く唯一の端末であり、深夜に自分の部屋で甘味な時間を過ごすパートナーだったわけです。EPCは概ね北海道FMのAIR-Gのヘビーリスナーであり、ほとんど全ての時間帯のラジオを聞いたことがあります。ちなみに私はAIR-Gで深夜3:00以降の音楽だけが流れるMusic Paitoにおいて流れるジングルの音源をGarage Band で発見しました。

特に我々のお気に入りの番組はJET STREAM(製作はTokyo FM)です。1967年から続くJALがスポンサーの長寿音楽番組です。現在は、福山雅治機長がパーソナリティを務めており、海外の情報と厳選された音楽、何よりフライトをテーマにしたオープニングにより、深夜に夜間飛行気分が味わえます。幼少期に深夜これを聴き続けた経験は、我々が旅をテーマにし続けている一因であることは間違い無いでしょう。

とにかくラジオを沢山聞いていた我々が、制作側にまわりたいと思うのは自然なことでした。

コンセプト作りとラジオ局への突入

地方のラジオ局は、地元の高校や大学の放送部との共同企画をやっているケースもありますが、我々には学校の後ろ盾はありません。そもそも、私は色々あって今日聴く機関に創作活動を監督されるのが嫌だったので独立性を担保したのですが、それゆえに「なぜ番組製作が初めての素人のガキどもである我々に番組製作を任せるのか」を納得してもらう必要があります。そのために、やりたい企画を明確にすることが重要です。

そこで我々が考えたコンセプトは、「洋楽×イギリスの生の情報」というコンセプトです。そして、これをサポートするリソースとして、以下の優位性をアピールしました。

  • 高校生ならではの音楽への異常な執着
  • 留学生ネットワークを使用した現地情報の入手

イラレで作ったベネトンチックなデザインの企画書を上質紙印刷し、いざ交渉。

当時の担当者の方は真摯に対応してくれて、とりあえず1回分を作ってみて、出来をみて継続するか判断という結果になりました。企画書段階の交渉結果としては上々とは思いつつ、直後にはプレゼンで盛りに盛った我々のスキルと実態のギャップが待ち構えています。

急遽実家にスタジオを作る

一応公共の電波に乗せるわけですから、録音にも一定のクオリティが求められます。高校生なので基本的にお金が無かったのですが、ロゴデザイン受注等でいただいた至近をAll inして、機材を揃えることにしました。主要な機材としては、マイク、モニター用ヘットホン、ミキサーなどです。Macに付随しているGarage Bandという音楽編集ソフトのおかげで、大幅に機材を削減できました。この時代に生まれたことを感謝です。また、調達コスト削減のために、複数のイヤホンに出力を分割するスプリッターなどは手作りするなどのDIYっぷりです。

番組製作時は複数人が喋ることを想定しているため、このような機材構成にしましたが、単独で収録するのであればパソコンとUSBマイクがあれば、最低限の収録はできます。また、最近であれば、iPhoneやiPadとマイクを接続して録音することも考えられます。

収録

初回の収録時は、15分の収録に丸一日かかりました。これには、トークテーマの決定、選曲、収録のテストとチェック、喋り方決定(敬語にするかタメ口にするか)を含みます。初期のテーマはイギリスの学生生活やイギリスの交通事情について、実生活の体験を交えてバスに乗った感想やイギリスの大学受験制度のGCSEについてなどをトピックとしました。話す内容をブレインストーミングしながら取り直して、よく言えばアジャイル収録です。

ロジ業務と事前準備の重要さ

週次の番組を1年半継続するためにもっとも重要となってくるのが、調整業務です。学生とは言え、テスト期間をはじめ修学旅行や文化祭などの各種学校行事や家族行事が重なれば、毎週収録することは難しくなります。また、体調不良など不測の事態があったとしても週に一回のオンエアを継続する必要があり、その為の日程調整やリマインド、キャストに急遽予定が入った時の日程の再調整等のロジ業務が重要です。個人的には大嫌いな業務ですが、放送局の矢面に立っているのは自分なので、万が一にでも収録が放送日に遅れるようなことでもあれば、信用を失ってしまうという危機感があるため、頑張って遂行しました。

番組製作が軌道に乗ってからは1回の収録で放送3回分を録音することもありました。その際に重要になってくるのは、あらかじめトピックと構成や選曲などを決めておく事です。勿論、実際に収録してみて情報を追加の情報を調べたり、構成を変更することは、品質向上のために重要です。また、トークの内容の多寡を吸収するために、曲を差し替えたり、編曲したりすることで番組としてぴったり15になるように調整するなどの作業は発生しますが、可能な限りシーケンシャルに収録ができるように準備を心がけました。

企画

番組の企画をする上で目標としたことは、学生が作ったとはいえプロが作った他の番組に引けを取らない視聴者に有益なコンテンツを提供することです。そのためには、リサーチが必要になります。

日本に居ながらリサーチで視聴者があまり知らないことを発見する方法として、海外の情報を翻訳する、専門的な情報元をあたる、とにかく最新の情報を早く伝える、の3点です。

番組を初めてしばらくすると、いわゆるネタ切れに陥ります。観光地や風習、一通りの日常生活について語り尽くすと、新しいアイデアを思いつかなくなります。イギリスというテーマがLondonの天気のように単一的でつまらないテーマのように錯覚してきます。しかし、ビジネスと文化の中心地であり激動の歴史があるイギリスで、ネタが思いつかなくなったのは自分の視野狭窄が原因です。フィッシュアンドチップスやビックベンのような日本人がイメージするイギリス像に縛られて居ることが最大の問題です。何かのテーマやお題について、つまらないと言う懸念が生じたら、まずは自分のクリエイティビティを疑いましょう。ガイドブックを読み尽くしたら、Time Out Londonなどの現地人向けの観光案内を読んだり、現地で放送されているラジオ番組をインターネットで聞いてみたり、現地で活躍している有名人の著作を読んだりSNSをフォローすると、ネタはいくらでも転がっています。

掛け算でテーマを作る

掛け算はコンセプトメイキングの定石としてよく知られています。もしかしたら、ポストイットに単語を書いてランダムに組み合わせるワークショップを体験したことがある人もいるのではないでしょうか。「○○×△△」というコンセプトを目にした事がある人は多いでしょう「IT×地方創生」とかです。同じ方法論で、「イギリス×○○」という枠組みでテーマを探します。○○の部分には、建築、ビジネス、ファッション、神経科学等、普遍的なテーマを入れます。普遍的なテーマを切り分けるのは難しいかもしれませんが、もし感覚が掴めなかったら主要なメディアのカテゴリー分けを参考にする事のがオススメの方法です。

イギリスという切り口をきっかけに普遍的なテーマについて、深掘りをするという構成にする形で番組を構成しました。例えば、建築についてのテーマであれば、イギリスの有名な建築物を紹介するだけであればガイドブックと同じ情報量でしかありません。しかしその歴史的背景や建築家の紹介、設計や施工上の技術的な特徴や都市計画上の役割を織り交ぜて原稿を考える事で付加価値を与えることができます。

雑誌のような番組を目指した

私が昔から読んでいるお気に入りの雑誌はWIRED というテクノロージー雑誌です。スタートアップやイノベーションを中心としつつファッションや食からAIや量子コンピューティングに至るまで、多くのテーマを扱っています。WIREDには単なる媒体としてではなく明確な哲学や主張があります。これは本来ほとんどのメディアにあることなのだろうと思いますが、WIREDの主張の一つはTechnological optimism、科学技術によって人類の生活はよくなるという信念です。世界では多くの専門家が問題を解決すべく様々な研究開発を行っており、それを知ることで読者は、最終的には明日に希望を持って創造的かつ建設的に人生を歩むことができる。WIREDには特集の組み方や記事の内容、エディトリアルデザインやグラフィック、ひいては広告の選定に至るまで、一つ一つがそれを体現していると感じています。

ラジオ制作に際しても、テーマの組み方や選曲、サウンドエフェクトの使い方などを駆使して、そういった世界観を体現するようにすることを意識しました。

これらの経験で得られたもの

英語

1年半の間ラジオを作ってみた経験は、我々に多くをもたらしました。まず、記事を翻訳し続けたことによる英語力の向上、これはもっとも短期的なリターンと言えます。受験に置いてReading とListeningは、ほぼ勉強が不要になりました。まあ、おかげで未だに文法をいまいち理解していない訳ですが。また、

ポートフォリオ

経験としてポートフォリオに書くことができたので、実績のない大学時代のインターン探しの貴重なネタになりました。

メディアリテラシーがついた

たとえ小規模とはいえ、メディアの製作側に回ってみたことで、情報の取捨選択、Fact Checkの重要性、複数メディアを比較すること、日本と海外での報道の仕方の違いに付いて理解する機会になったとともに、SNS時代に置いて、情報発信の基礎を学ぶことができました。昨今子供のSNS利用とその問題点が問題になっていますが、個人的には番組を運営させるのが手っ取り早いと思います。

アイデア

アイデアの出し方が訓練できました。特に、 コンセプト作りなどクリエイティブシンキングが得意になったので、とっかかりのない問題に対処し、膠着状態の議論を打開することがきるようになりました。これはEPCで記事を考えるときに役立っているのはもちろんのこと、社会人になっても役に立っています。


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【FM FUJI みんなのラジオ出演】ラジオの生放送に出た話 | EAT PRAY CARP · 1月 31, 2021 at 4:14 pm

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