皆さんこんにちは。コックです。
観光地として若者を中心に日本でも人気のあるウユニ塩湖に行ってきました!
本当に写真で見た景色が眼下に広がっており、感動の連続でしたが、同時に地獄も味わうことになった今回の旅でした。
この記事では、私、コック自身が身をもって体験した高山病を患者視点で紹介していきたいと思います!
Contents
高山病とは
高山病は、ウユニのような標高の高い場所、「空気が薄い」場所で低酸素状態にさらされることによって引き起こされる疾患です。低酸素状態によって、呼吸困難、頭痛、嘔気、発熱、全身倦怠感などの多様な症状を引き起こします。
ウユニは、標高が約3700mほどで富士山山頂と変わらないほどの標高ですので、当然高山病のリスクも高い地域です。
今回の旅行では、我々も対策を考え、計画を練ってきました。
計画通りにいかなかった対策
高山病に対して、順応期間を設けることと、アセタゾラミドの内服で対策をとりましたが、ここで思わぬトラブルが発生しました。
コック、国際線乗り継ぎに失敗する。
これは、完全に考えていませんでした。今まで、乗り継ぎは何回か経験してきて油断してました。
その結果、ウユニでの出発までの順応期間が2日はから1日に減ってしまったのです。
つまり私は、ウユニに入ってから1日しか経っていないのに、何10㎏の荷物を積んだ自転車で、悪路の続く標高4000m超級の上り坂を上ることになったのです。
リスクまみれでしたが、日程に余裕はありませんでした。
まあ、なんとかなるだろうと思っていました。
準備中につのる不安
現地ガイドに送ってもらい、宝石の道の行程をスタートさせるホテルに夜到着しました。ホテルは、Los Flamencos Eco Hotel(フラミンゴホテル)という名のLaguna Hediondaのわきにあるこじんまりとしたいい宿でした。
ホテルの名にあるように、Laguna Hediondaには、多くのフラミンゴが訪れていました。

このホテルのフロントの一角を借りて、当日の朝にパッキングを行いました。
試しに、何も自転車に乗せていない状態でホテル周辺を走ってみました。
わずか50mくらいこいだだけなのに、息切れが止まりません。これからの行程に不安が募ってきました。
出発~昼まで
しかし、この時点では体調にまったく問題なく、これからの冒険に向けての期待感の方が強かったです。
重い荷物をパッキングし終えて、いよいよ出発となりました。


写真から分かるように初日は、始めが登りの多いコースでした。ホテルが4100mで、最終目的地は、36㎞ほど先の標高4200mでした。
スタート直後から今までの旅とは異なり、高地を走っていることを実感させられました。わずか数100mしか進んでいないのに、まるで数10㎞走ったかのような疲労感が襲ってきます。
おまけに悪路の上り坂のため、スピードは出せず時速換算だと2~3㎞ほどだったと思います。けれども昼頃までは、特に体調に異変をきたすことなく休み休み進めたと思います。
9時に出発し、13時ごろには10㎞地点まで来ました。

異変発生!
10㎞地点で昼食をとることとなったのですが、ここで始めの異変が生じました。
この私コックが、あろうことか、
食欲を失ったのです。
これは非常事態です。食い意地だけは人一倍強いと自負している自分からするとかなり焦る状況です。
疲れているのかもしれない。そう思った私は、昼食後にひと眠りすることとしました。
昼食後~
食後30分ほど仮眠をとって、再スタートとなりました。
道は、相変わらず悪路で、乗ったり、押したりと大変です。
そして、午前中とくらべ、圧倒的に速度が遅くなり、疲れやすくなりました。
全身の倦怠感がひどい状況でした。
しかし、この程度なら以前の旅でもきつい登り坂で感じるものとさほど変わらず、気合いで何とかするしかないと思ってしまいました。
ここで、私に最後の追い打ちをかけてきたのは、向かい風&雨です。
これで、体温、気力、すべて奪われてしまいました。カッパを取り出そうにも若干の意識障害が起きてきて、感情の制御もできなくなってきました。
カッパを半狂乱で探し当て、進みますが、前の2人とは差が開くばかりです。
そして、ついに…
機能停止
今まで感じたことない倦怠感と共に歩みが止まってしまいました。呼吸もかなり乱れます。
たとえるなら、二郎系ラーメンでキャパ以上のブツが出てきて、最後のひとくちがどうしても食べれない状況とでも言いましょうか。
本当に足が動かなくなりました。
しかし、ここであきらめるわけにはいきません。
何とか最後の気力を振り絞り、歩みを進めました。最後の歩みです。
5mしか進みませんでした。
終わりです。もう今日は動けません。
2人から無理ならあの言葉を言えと促されました。
「ここをキャンプ地とする」
こうして、初日の行程は、6時間で10㎞という短さで幕を閉じました。
悪化する症状、ちらつく「死」
何とか3人でテントを立て、とりあえず休むこととしました。
風邪みたいで、休めば順応してくれるだろうと思っていました。
しかし、高山病は休んでくれません。
横になっても、息苦しさは改善せず、軽い頭痛も出てきて来ました。この時点でのバイタルは、SpO2は70%台、心拍数は安静時でも120/分と完全に体の状態が狂っていることを伝えていました。
しかし、砂漠のど真ん中で対応できることはありません。とりあえず休むこととなりました。

数時間ほど寝てみましたが、体調は一向に良くなりません。
それどころかSpO2が65%まで低下しているではありませんか。ありえないほど体が重く、息も苦しい状況でした。
60%台を見たとき、さすがに「死」がよぎりました。
ツアコンもこれは改善の見込みがないと判断し、行程を断念、私の救命に全力を尽くすことに全神経を向けてくれました。
私はというと医学の知識は多少なりとはあるものの、完全に頭が働かず、静かな患者に徹していました。
やはり、優秀な医学生は頼りになります。
近くを通るツアーのランドクルーザーを引き留め、状況を説明し、酸素ボンベを確保してくれました。
私は、5L/分という高流量で酸素投与を5分ほど受け、バイタルは回復しました。少しだけ、体が楽になり、起き上がれるようになりました。
その後、自分たちをホテルまで送ってくれたツアーガイドをキャンプ地まで、呼び戻し、ウユニまで戻ることになりました。
このころの体調は、歩みが止まった時よりは改善し、自分で歩き回れるようになりました。酸素投与は偉大です。
かくして、我々の宝石の道の旅は幕を閉じてしまったのです。
私を助けてくれた友人たちには感謝しきれないし、完走できず足を引っ張ったことも申し訳なく思います。
症状のまとめ(コックの場合)
食欲低下→易疲労感→全身倦怠感→軽度の意識レベル低下→運動能力低下(5mの平地歩行困難)→バイタル異常(SpO₂:65%、心拍数:120~130/分)
原因の分析
やはりいちばんの原因は、順応期間が1日しかない中で、高負荷の運動を標高4000mで行ったことでしょう。
順応期間が4日ほどあった二人は、目立った症状がありませんでした。
もう一つ高山病以外に私が陥っていたかもしれない状況として、脱水が考えられます。6時間の運動で水を1Lちょっとしか飲んでおらず、尿も1回しか出ていませんでした。高地では、こまめな水分補給が高山病の予防になるという指摘もあるので、飲水を積極的に行っていればもう少し発症を遅らせることができたかもしれません。
何にしろ、高地で私のような症状を感じることがあれば、なるべく早く、人に相談し、高度を下げることがベストであると強く学んだ患者体験でした。

Yoshiyuki Kosuge
Age 24
Iwate, Japan
料理・グルメ担当。アラスカではホイル焼き文化を広めた。甘味への異常な執着を持ち、旅行中1日1回アイスを食べる、通称アイス権の行使を目標としている。運動不足がたたって上り坂に苦しめられている。不遇の浪人時代を経たため未だに医学生。
4 Comments
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