今日も高校の社会科選択の際に、学校や予備校で受験工学を語る人物たちが「理系は地理がコスパがいい」「センター地理は、8割取るにはコスパがいいが、9割超えは暗記だけでは無理」と多様な論を展開し学生を混乱させている。しかし概して地理は簡単な暗記科目として認識されているのではないだろうか。そして、無数の地名、植生、気候区分などが文字列として受験生たちの記憶領域に詰め込まれ、試験の点数に射影され、輝かしい未来へ向けたバラ色の大学生活の思い出に居場所を譲り忘却のかなたへ旅立つ。


私が受験勉強をしていたのは、5年以上前のことだが、地理の勉強は楽しかったと記憶している。白地図に、色を塗って気候、植生、言語、文化、産業、人種などを分類したり。都市と都市を線で結んで航路、空路、道路、鉄道を表したりしながら、自分で書いた白地図が少しづついまの地球を表現するようになっていくのを楽しんでいた。映画好きだった私は、映画の舞台になった場所が試験で出てきたときにちょっと得した気分になったことを覚えている。
私は全国の地理選択者の学生をこう呼びたい:机上の旅人と
EPCメンバーは理系率が高いこともあり、ほとんどがかつて地理選択者であるため、EPCの旅は何かと地理に結び付けられることが多い。
初めての自転車旅、茨城県大洗から名古屋の旅の名前は”Over The Fossa” これは東西日本を分ける中央地溝耐”フォッサマグナ”に由来する。分けるといっても地質学的には千葉県から静岡県にわたるため、明確に分断している何かがあるわけではない。
京都~福岡を横断した旅の名前は”Moraine 5” は山口県の秋吉台の”カルスト地形”を当時浪人生だった小菅が”モレーン”と誤認し名付けた。ちなみにモレーンとは、氷河が谷を削りながら時間をかけて流れる時、 削り取られた岩石・岩屑や土砂などが土手のように堆積した地形のことである。
舞台を海外に移してからは名前にこそならなかったもの、それまで以上に様々な植生や土壌、気候や文化に触れてきた。

ここで道中の写真とともに世界の植生で見ていこう
ニュージーランドはステップ(温帯草原)

台湾は暖温帯常緑広葉樹林

韓国は冷温帯夏緑広葉樹林

ギリシャは亜熱帯低木林

マレーシア/シンガポールは熱帯雨林である

これらの気候区分はあくまで群系分布であり、局所的には標高や気候、人間による開発の影響により実際の植生とは異なる場合もある。
そして、アラスカで我々をまっていたのは、どこまでも続くタイガ(北方針葉樹林)だった。

しかも、悲しいかな、当初我々はツンドラとタイガの区別がついていなかった。
ツンドラとは、永久凍土上に夏場に地衣類などが生えるのみの寒地荒原のことであることを、我々はデナリ国立公園で学ぶことになった。

もう一つ、アラスカで体感したのは白夜である。厳密には、滞在したのは8月で夏至を過ぎており、夜は3時間ほどあったため白夜ではないのだが、我々の時間間隔を麻痺させるのには十分だった。

21時頃になっても青々とした空、23時にやっと訪れる夕暮れのおかげで、初日はスケジュールの遅れにもかかわらず、いつまでも自転車に乗ることができた。我々はこれを残業し放題と呼んだ。
夜は短し、走れよ乙男
暗くならないと眠くならない私たちは、時差ぼけ以上に概日リズムを狂わせながら、23.4°の赤道傾斜角を体感した。
旅をすると、地図で見ていた知識が体験に変わる。それは、かつて文字列として暗記した何かを実態と結び付ける答え合わせといえるのではないかと思った。
EPCはその答え合わせにこれから人生をかけてゆくのだ。
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